ネガティブなことを考えても、それで悪いことを呼んだとは言えない

「悪いことを考えると、それが現実になる」。そう聞いてから、不安が浮かぶたびに打ち消し、つい口にした弱音を言い直すようになった。考えないようにするほど、頭から離れない。先に答えます。ネガティブなことを考えたり口にしたりすると悪い出来事が起きる、と確かめた研究を、編集部は確認できていません。

怖さの正体には、説明できる部分があります。人は、先に考えていたことが後で起きると、自分の考えが起こしたように感じやすい。そして、考えを締め出そうとするほど、その考えは戻ってきやすい。怖くなるのは、あなたの心が弱いからでも、波動が低いからでもありません。

この記事は、ネガティブな感情を消す方法も、ポジティブな言葉で良いことを呼ぶ方法も書きません。書くのは、浮かんだ不安を見張る形から降りて、備えに使う形へ移す手順です。寝る前に浮かぶ不安の扱いは寝る前の引き寄せが効かないのはなぜかに、自分に言い聞かせる言葉の検討はアファメーションに効果はあるのかに分けました。

りゅうの立場。ネガティブは、消すものではない

脳質改善を提唱するりゅうは、引き寄せを否定していません。「引き寄せは確実に存在すると思ってる」と話す一方で、「波動とか宇宙とかに原因を全て押し付けるようなスピリチュアルは嫌いかな」とも答えています(2026年7月25日の本人回答)。ネガティブな感情については、本人インタビューでこう話しています(2026年7月17日の本人回答)。

常にポジティブになる必要はありません。ネガティブな感情や捉え方も、使い方によっては人生を前へ進める方向に働くことがあります。

同じインタビューで、りゅうは、動物の飛び出しを避けて車が廃車になった事故(同乗の家族に怪我はありませんでした)を、次に生かせる教訓を得た経験だと捉えたうえで、こう付け加えています。

出来事によっては、ネガティブに捉えたほうが人生が前へ進む場合もあります。逆に、ポジティブに捉えたほうが前へ進む場合もあります。何でもポジティブに考えればよいという話ではありません。

本人の見立てでは、問題はネガティブな考えが浮かぶことではありません。浮かんだあとに、人生が止まる捉え方を無意識に選んでしまうことです。研究で確かめた法則ではありません。

「考えたから起きた」と感じてしまう仕組み

悪いことを想像した翌日に、本当に嫌なことが起きた。こういう経験があると、怖さは確信に変わります。プローニンらの研究(2006)は、この感じ方そのものを実験で調べました。

1つ目の実験では、参加者が、もう1人の参加者(実は実験の協力者)に見立てた人形に針を刺しました。協力者はそのあと、頭痛を訴えます。協力者に悪い思いを抱くよう仕向けられた参加者は、そうでない参加者より、自分が頭痛を起こしたと感じやすくなっていました。2つ目の実験では、仲間のシュートを見る人が、先に成功する場面を思い描いておくと、自分が成功に影響したと感じやすくなりました。起きてほしくない結果について考えていた場合でも同じ傾向が見られた、と著者たちは報告しています。

この研究が示すのは、考えが出来事を起こすことではありません。先に考えていたことが起きると、人は自分の考えが原因だったように感じやすい、という感じ方の側の話です。大学生などを対象にした実験で、日常の不安や引き寄せを調べたものでもありません。ただ、「考えたから起きた」という手応えは、考えが出来事を動かした証拠にはならない、と考える材料になります。

考えないようにするほど、戻ってくる

怖さが強いと、次に始まるのは見張りです。浮かんだら打ち消す。口にしたら言い直す。ワンらのメタ分析(2020)は、ある考えを頭から追い出そうとしたときの皮肉な効果を、31の研究でまとめました。押さえ込むのをやめたあとに、その考えがかえって浮かびやすくなる「リバウンド」は、頭に余裕があるかどうかにかかわらず見られました。押さえ込んでいる最中に増える効果は、ほかのことで頭が忙しい条件でだけ見られました。

題材の多くはシロクマのような、日常の心配とは違う対象です。不安の強い人を調べたものでも、引き寄せを調べたものでもありません。それでも、「考えてはいけない」を守ろうとするほど、その考えが頭に戻ってきやすいという筋道は示されています。

ここで、怖さは輪になります。考えたら引き寄せると怖くなる。考えないよう見張る。見張るほど浮かぶ。浮かんだことが、また怖い。輪を回しているのは、あなたの考えの中身ではなく、「考えたら現実になる」という説明のほうです。1日中内面を見張る疲れそのものはスピリチュアルに疲れた人へで扱いました。

口癖と言霊について、言えること

口にした言葉が現実になる。日本には昔から言霊という考え方があり、大切にしている人もいます。この記事は、それを否定しません。ただ、言葉そのものに出来事を起こす力があるかは、確かめる方法がない説明として扱います。口癖を変えれば現実が変わる、とも書きません。

りゅうが言葉について話しているのは、別の角度からです。伸び悩む人に共通する反応を聞かれ、助言に「でも」「だって」と返してしまう様子を挙げたうえで、こう続けています(本人インタビュー)。

もちろん、「でも」「だって」をポジティブな方向に使うのは良いと思います。たとえば足を骨折しても、「でも、家でゆっくりできるからいい」と捉えるような変換です。

口癖や言霊について語った言葉ではありません。本人が見ていたのは、言葉が出来事を呼ぶかどうかではなく、同じ「でも」が、試す前に助言を退ける向きにも、別の見方を探す向きにも使えることです。

順番についての話もあります。お金が一番だという考えを手放したあと、最初に何が変わったかを聞かれて、りゅうは「自分から出る言葉が変わった」と答えています(2026年7月27日の本人回答)。お金についての話で、口癖について語ったものではありません。それでも本人の経験では、考えが変わってから言葉が変わった、という順番でした。言葉を先に取り締まるより、捉え方の側を見るほうが、本人の順番に近いと編集部は考えます。

不安は、備えに使える

ネガティブな予想には、使い道もあります。ノレムとキャンターの研究(1986)は、課題の前に悪い結果を予想して不安を抱える人たちの一部が、その予想を、起こりうる失敗を先に考えて備える作戦として使っていることを調べました。この人たちは見込みが低くても成績が下がっておらず、作戦を邪魔された条件では、成績が下がりました。

大学生を対象にした実験室の課題です。悪い予想をすれば誰でもうまくいく、と示したものではありません。悲観的な予想が良い出来事を呼ぶ、という話でもありません。持ち帰れるのは、不安な予想は、打ち消すか引き寄せるかの2択ではなく、備えの材料にもなるという見方です。

りゅうは、現実を見ることと現実に支配されることの違いを聞かれ、編集側が出した3つの言い方の中から、自分の考えに合うものとしてこれを選びました(2026年9月3日)。

現実って天気予報と同じで、雨って分かったら傘を持つだけなんですよ。雨だから出かけない、になったらもう支配されてます

不安について語った言葉ではありませんが、ネガティブな予想の扱い方にそのまま使えます。雨の予報を聞いても、雨を呼んだことにはなりません。やることは傘を持つことです。お金の不安で頭がいっぱいの人に向けては、「最終的な逃げ場や逃げ道のことを考えると上手に前に進めると思います」とも話しています(2026年7月31日の本人回答)。

「ネガティブは引き寄せる」と言われることを、確かめられる言葉に直す

画面が狭い場合は、表を左右にスクロールできます。

よく言われること怖くなる理由確かめられる言葉に直すと自分の担当
悪いことを考えると現実になる考えるたびに、自分が不幸を呼んだ気がする考えが出来事を起こすと確かめた研究は、編集部は確認していない。先に考えたことが起きると、自分が原因だと感じやすいという実験がある考えと出来事を、別の欄に書く
ネガティブな考えはすぐ打ち消す1日中、頭の中を見張ることになる考えを締め出そうとすると、やめたあとに戻ってきやすいというメタ分析がある打ち消さず、浮かんだと認めて置く
口癖や言霊で現実が変わる弱音を口にするたびに、言い直しに追われる言葉が出来事を起こすかは、確かめる方法がない単語より、その言葉が試す前に止める向きかを見る
不安を感じること自体が悪い不安な自分を責める不安な予想を、備えの作戦として使う人たちがいるという研究がある不安を予報として1行書き、傘を1つ決める

この表は編集部の整理です。右端の列をやれば悪いことが起きない、良いことが起きる、という意味ではありません。

架空の例:弱音を言い直し続けたGさん

編集部が作った架空の例です。実在の相談や、受講生の事例ではありません。

Gさんは、転職の面接を控えています。「落ちるかもしれない」と思うたびに、「受かる、受かる」と心の中で言い直してきました。友人に「たぶん無理だと思う」と漏らしてしまった夜は、口にしたせいで落ちる気がして眠れませんでした。

Gさんが変えたのは、打ち消すのをやめたことです。「志望理由を聞かれて詰まるかもしれない」と紙に1行書き、それを予報として扱って、傘を1つ決めました。「志望理由を3文で書いて、明日の朝、声に出して2回読む」。夜にまた不安が浮かんだときは言い直さず、「さっき書いた予報だ」と思うだけにしました。

面接に受かったかは、この例では分かりません。変わったのは、不安が浮かぶたびに自分を責めていた時間が、準備の1行に置き換わったことです。

今日できる1つの動作。浮かんだ不安を、予報として1行書く

  1. 浮かんだ不安を、そのまま1行書く。「〜かもしれない」の形でかまいません。書いたから起きる、と示した研究を、編集部は確認していません。
  2. 備えられる予報か、備えようがない心配かを分ける。面接で詰まる、は備えられます。相手がどう思うか、は自分では動かせません。
  3. 備えられる予報には、傘を1つだけ決める。5分でできる大きさにします。
  4. 備えようがない心配は、「今は置く」と書いて閉じる。打ち消し直さなくていい。

4つ目について、りゅうは「見れば見るほど不安になるものや、考えても取り返しがつかないものは見ない方がいいことも多いかな」と話しています(2026年9月3日の本人回答)。見ないでおくのは、怖い考えを締め出すためではなく、動かせるほうに時間を使うためです。起きたことと受け取り方を分ける書き方は事実と解釈を分ける方法に、不安から自分を責め始めてしまうときは自己否定をやめたいときにあります。

この記事が約束しないこと

ネガティブなことを考えたり口にしたりすると悪いことが起きる、とは書きません。ポジティブな言葉を使えば良いことが起きる、口癖を変えれば現実が変わる、とも書きません。ネガティブな感情を消すことも勧めません。引用した研究が扱うのは、先に考えていたことが起きたときの感じ方、考えを押さえ込んだときに起きること、不安な予想を備えに使う作戦です。どれも、引き寄せや言霊を調べたものではありません。りゅうの発言は本人の見立てで、不安や口癖について語ったものではない部分を含みます。

考えを見張ることより、その手前にある捉え方や行動の土台から見直したい方は、無料セミナーの内容を確認することができます。セミナーは、ネガティブな考えを消す方法を教えるものではありません。不安や心配が頭から離れず、気分の落ち込みや眠れない状態が続く、生活に支障が出ているときは、考え方の問題として抱え込まず、医療機関や公的な相談窓口への相談を優先してください。脳質改善は医療ではなく、この記事は診断や治療ではありません。

よくある質問

ネガティブなことを考えてしまったら、すぐ打ち消したほうがいいですか?

打ち消すことは勧めません。考えを頭から締め出そうとすると、やめたあとにかえって浮かびやすくなる、という研究のまとめがあります。浮かんだ考えは「浮かんだ」と認め、備えられることがあれば1つ決め、なければ置いておく、という扱い方があります。考えが浮かんだことで悪いことが起きる、と示した研究を、編集部は確認できていません。

口癖や言霊で、現実は変わりますか?

口にした言葉が出来事を起こすかを確かめた研究を、編集部は確認できていません。言霊という考え方を大切にすることは否定しませんが、この記事は、確かめる方法がない説明として扱います。見るなら、その言葉が試す前に止める向きか、別の見方を探す向きか、のほうです。

悪いことを想像したら、本当に起きました。引き寄せてしまったのでしょうか?

そう決める根拠はありません。先に考えていたことが後で起きると、人は自分の考えが原因だったように感じやすい、という実験があります。考えが出来事を起こしたと示した研究ではありません。起きたことへの対応を1つ決めるほうに、時間を使ってください。

ポジティブなことだけ考えるようにすれば、良いことが起きますか?

そうは書きません。ポジティブな考えや言葉が良い出来事を呼ぶと確かめた研究を、編集部は確認できていません。りゅうも「常にポジティブになる必要はありません」と話しています。不安や心配が頭から離れず、気分の落ち込みや眠れない状態が続くときは、考え方の問題として抱え込まず、医療機関や公的な相談窓口への相談を優先してください。

不安は、呼ぶものではなく、読むもの

悪いことを考えてしまう自分を、今日から見張らなくてかまいません。浮かんだ不安は、あなたが不幸を呼んだ印ではありません。予報として1行書き、備えられるなら傘を1つ、備えようがなければ置いておく。怖い考えが浮かぶ日があっても、次に何を選ぶかはあなたが決められます。

引き寄せが効かなかった理由の整理は引き寄せの法則は効果がないのかに、波動が下がるのが怖いときは波動を上げたいのに上がらないのはなぜかに、よく言われる主張を1件ずつ確かめた一覧はよくある誤解の検証にあります。