答え:器の大きさは確かめられず、収入が何で決まっているかは確かめられる
収入が上がらないのは、豊かさを受け取る器が小さいからだ、とは確かめられません。確かめられるのは、自分の収入を誰が何を見て決めているかを、自分が知っているかどうかです。
契約更新の面談で「時給の希望はありますか」と聞かれ、「お任せします」と答えて部屋を出る。派遣で事務を3年続け、時給が1度も変わっていない坂本さん(編集部が作った架空の例です)の面談は、3年間この形でした。この記事は、坂本さんの「上がらない」を4つに仕分け、最後に1行を書くところまでを扱います。
4つとは、①自分の仕事の値段を口に出していない、②お金持ちや稼ぐことへの抵抗感、③何で収入が決まっているかを知らない、④比べる相手が収入の見方を決めている、です。「豊かさを受け取る器」「お金持ちを嫌うと入ってこない」「収入の天井は潜在意識が決める」は、本当とも嘘とも決めず、確かめようがない説明として横に置きます。転職、副業、投資、資格、独立、値上げの方法と、年収や時給の目安は書きません。
「器」「天井」の説明をどう扱うか
3つの説明には、共通の形があります。収入が上がらない原因を、自分の内側の、測れない場所に置くことです。器の大きさも、潜在意識の天井も、いまの高さを数字で確かめる手立てがありません。説明が成り立つかどうかと、翌日に何をするかは、別の話です。
この説明に救われた経験がある人もいます。「自分の努力が足りないからだ」と責め続けるより、「器を広げればいい」と思えたほうが、楽になった夜があったはずです。編集部はその夜を否定しません。ワークの隣に、収入を決めている側の事情を確かめる1行を足せます。
りゅうが手取り月14万円で暮らしていた頃
起業する前、りゅうは大阪でアルバイトを掛け持ちしていました。コールセンター、居酒屋、レンタルビデオ店、音楽スタジオです。2026年7月の本人インタビューで「起業する前は、何歳で、何をしていましたか」と聞かれた答えの中に、その頃の収入が出てきます(収入について聞かれた答えではありません。引用の前の1文「今は東京に住んでいますが、当時は大阪に住んでいました。」を省いています)。
収入は手取りで月14万円くらいでした。楽器のローンを300万円以上組んでいたので、給料はほぼなくなりました。給料日まであと3週間なのに、財布に1万円か2万円しかない。本当に毎月、そんな毎日でした。
同じ頃の働き方を、別の回答では「バイトに行った分だけお金をもらえるっていう時給労働」と呼んでいます(2026年7月27日の本人回答。手放したもの・諦めたもの・手放さなかったものを聞かれた答えのうち、諦めたものとして挙げた言葉です)。この記事は、仕事を辞めることも独立も勧めません。この頃の収入が何で決まっていたかを、本人は話していません。編集部は、時給と入ったシフトの時間で決まる働き方の例として、この話を置きます。器がここに入るかどうかは、確かめられません。
「上がらない」の中身を4つに仕分ける
「収入が上がらない」は、4つの違う状態を1つの言葉で呼んでいます。混ざったままだと、どれにも効かないワークを選びやすくなります。入ってくるお金のブロック全般の仕分けはお金の引き寄せが叶わないのはなぜかにあり、ここでは繰り返しません。表の右の列は、今日1行で書ける確かめ方です。
画面が狭い場合は、表を左右にスクロールできます。
| 中身 | よく起きる場面 | 言えること・言えないこと | 今日の1行 |
|---|---|---|---|
| ①自分の仕事の値段を口に出していない | 面談で希望を聞かれて「お任せします」と答える。見積もりの額を相手に決めてもらう。 | 口に出していない値段は、決める側の机に載っていません。口に出せば上がる、とは言えません。 | 私の仕事の値段を、最後に数字で口に出したのは(いつ) |
| ②お金持ちや稼ぐことへの抵抗感 | 稼いでいる人の話を聞くと「何かずるい」と反射で思う。高い値段を付ける自分が、悪いことをしている気がする。 | 抵抗感があると収入が入ってこない、とは確かめられません。抵抗感が①を止めているかどうかは、確かめられます。 | 「お金持ち」と聞いて浮かぶ顔は(誰) |
| ③何で収入が決まっているかを知らない | 昇給の時期も決め方も知らない。取引先が何を見て発注しているか知らない。単価と量のどちらが動いていないのか分からない。 | 決める側には、決める側の事情があります。内側だけを探しても、決める側の事情は見えません。 | 私の収入は(誰)が(何)を見て、(いつ)決めている |
| ④比べる相手が収入の見方を決めている | 同期の年収を聞いた夜から、同じ給料が急に少なく感じる。SNSで見た月収の数字が頭から離れない。 | 中央値より給与が低い人は、同僚の給与を知ると満足度が下がった実験があります(米国の大学職員)。比べなければ満足する、とは言えません。 | 「上がらない」と感じた直前に見たのは(誰の何) |
③決める側は何を見ているのか:企業の側の答え
厚生労働省の「賃金引上げ等の実態に関する調査」(2024年)は、常用労働者100人以上の民間企業に、賃金の改定を決めるとき最も重視した要素を聞いています。有効回答1,783社のうち、2024年中に賃金の改定を実施した、または予定していて額も決定している企業(全体の86.3%)の答えでは、最も多いのが「企業の業績」で35.2%、次が「労働力の確保・定着」14.3%、「雇用の維持」12.8%でした。並ぶ項目は、世間相場、物価の動向、労使関係の安定、親会社の改定の動向、前年度の改定実績です。働く人1人1人の願い方は、項目にありません。
100人以上の企業の調査なので、小さな会社、個人事業、派遣やアルバイトの時給には、そのまま当てはめられません。会社全体の賃金改定の話で、あなた1人の昇給が何で決まるかを示したものでもありません。それでも、決める側が自分の数字を見ていることは分かります。内側を探すだけでは、その数字は分かりません。
④自分より給与が高い人がいると知ると、満足度が下がった:カードらの実験(中央値より低い人の場合)
カードらの研究(2012)は、カリフォルニア大学の3つのキャンパスの職員を対象に、無作為に選んだ職員へ、州職員の給与を誰でも見られるウェブサイトがあることをメールで知らせました。2008年10月から2009年5月のことです。その3〜10日後に全職員へ仕事の満足度と転職の意向を尋ね、回答した6,411人を分析しました(回答率は2割強)。
自分の部署と職種の中央値より給与が低い人は、サイトを知らされると、給与への満足度と仕事への満足度が下がり、新しい仕事を探すつもりだと答える割合が上がりました。中央値より高い人には、変化がありませんでした。満足度を動かしたのは、額の差より順位の差でした。
米国の大学職員で、回答したのは2割強です。日本の会社員や自営業に同じことが起きるかは、この研究では分かりません。比べなければ満足が戻る、とも言っていません。編集部の読み替えは1つです。「上がらない」という感覚は、額ではなく順位から来ている場合があります。給与明細の数字が変わっていないのに、ある日から急に少なく感じたなら、その日の直前に誰の何を見たかを、1行で書けます。比べる軸の分け方は他人と比べるのをやめたいときに、手が届く相手にだけ出る感情の扱いは嫉妬は波動を下げるのかにあります。
①求人に「交渉できる」と書かれているかで、交渉を申し出る男女の差が変わった:ライブラントとリストの実験
ライブラントとリストの研究(2015)は、約2,500人の求職者を、労働契約の条件が異なる求人に無作為に振り分けて、行動を比べました。給与について交渉できるとはっきり書かない求人では、男性のほうが女性より交渉を申し出る割合が高く、「給与は交渉可能」と明記すると、その差は消え、むしろ逆転する傾向が出ました。男性は給与の決まり方が曖昧な職場を好み、女性はそうではなかった、という応募先の選び方の差も報告されています。
男女差を調べた実地実験で、交渉すれば給与が上がることは示していません。この記事も、交渉の方法は書きません。編集部が読み替えて持ち帰るのは、「言ってよい」と書かれているかどうかで、口に出す人の割合が変わる場合がある、というところまでです(この研究が示したのは男女差で、人数全体の増減ではありません)。自分の仕事の値段を数字で口に出したことがないなら、先に確かめるのは、言ってよい場かどうかと、言う相手は誰か、の2つです。②の抵抗感は、ここで顔を出します。「稼ぐ人はずるい」という反射が、自分の値段を言う手を止めているかどうかは、確かめられます。
架空の例:面談で「お任せします」と答え続けた坂本さん
編集部が作った架空の例です。実在の相談や、受講生の事例ではありません。
坂本さんの契約更新は半年ごとで、面談で時給の希望を聞かれるたびに「お任せします」と答えてきました。時給は3年前と同じです。上がらないと感じ始めたのは、学生時代の友人の年収を聞いた夜からで、その後に「豊かさの器が小さいから」という説明に出会い、お金持ちへの嫌悪を手放すワークを3か月続けました。
坂本さんの「上がらない」を仕分けます。④は、はっきりしています。時給は3年前と同じで、変わったのは比べる相手です。③は、派遣会社の担当に、時給の見直しの時期と基準を1度も聞いたことがありませんでした。①は、希望の時給を数字で口に出した回数が、3年で0回です。②は、ワークで減った気はするものの、①の0回は動いていません。
坂本さんが書いた1行はこうです。「私の時給は、派遣会社の担当が、契約更新のときに、派遣先の予算を見て決めている(たぶん)。」この1行には、まだ「たぶん」が付いています。次に確かめる場所は、この3文字です。
今日できる1つの動作:収入が何で決まっているかを1行で書く
- 紙に1行を書く。「私の収入は、(誰)が(何)を見て、(いつ)決めている。」と、空欄ごと書き写します。
- 埋まる空欄だけ埋める。埋まらない空欄には「?」を書きます。推測で埋めるときは、末尾に「(たぶん)」を付けます。
- 「?」か「(たぶん)」を1つだけ選ぶ。それを埋められる人の名前を横に書きます。派遣会社の担当、上司、取引先の担当、家族でもかまいません。聞くかどうかは、今日は決めません。
- 次の給料日か入金日まで、紙を見える場所に置く。
「?」が3つとも残っても、失敗ではありません。3つの「?」は、確かめる場所が3つある、ということです。願いを動かせることと動かせないことに分ける手順は願いが叶わないのはなぜかに、努力と成果の関係を見直す記録表は努力が報われないときにあります。
給料の未払いや不当な扱い、ハラスメントがあるとき
給料や残業代が支払われていない、理由なく賃金を下げられた、職場でいじめや嫌がらせ、パワハラを受けている。この場合は、自分の捉え方や1行の書き方を工夫するより、公的な窓口への相談を優先してください。厚生労働省の総合労働相談コーナーは、解雇、賃金の引下げ、いじめ・嫌がらせ、パワハラを含むあらゆる分野の労働問題を対象に、全国378か所で予約不要・無料で相談を受けています(土日祝日は閉庁。相談員が不在の日時もあり、事前の連絡が推奨されています)。法律に違反する疑いがあれば、労働基準監督署などに取り次ぐ仕組みです。平日の夜や土日・祝日は、厚生労働省の委託事業労働条件相談ほっとライン(0120-811-610)が、賃金不払残業など労働基準関係法令に関する相談を無料・匿名で受けています(2026年4月1日時点の案内)。
この記事は、法律相談でも、職場の相談でもありません。
この記事が約束しないこと
このとおりにすれば収入が上がる、給料が増える、稼げるようになる、とは書きません。「豊かさの器」「お金持ちを嫌うと入ってこない」「収入の天井は潜在意識が決める」が本当か嘘かも決めません。あなたを性格や育ち、通俗的な呼び名で説明することもしません。転職、副業、投資、資格、独立、値上げの方法や特定のサービスは勧めず、年収や時給の目安も出しません。りゅうの発言は、起業前の暮らしと、諦めたものについて語ったもので、収入の上げ方について語ったものではありません。
お金の場面での捉え方や行動を見直したい方は、脳質改善セミナーの内容を確認することができます。セミナーは収入を上げる方法を教えるものではありません。気分の落ち込みや眠れない状態が続くときは、ひとりで抱え込まず、医療機関や公的な相談窓口への相談を優先してください。相談先は、厚生労働省のまもろうよ こころが、電話やSNSの窓口を案内しています。脳質改善は医療ではなく、この記事は診断や治療ではありません。
よくある質問
自分の仕事の値段を口に出したことがありません。それが、収入が上がらない原因ですか?
原因だとは決められません。言えるのは、口に出していない値段は決める側の机に載っていない、というところまでです。口に出せば上がる、とも言えません。先に確かめるのは、言ってよい場かどうかと、言う相手は誰か、の2つです。
豊かさを受け取る器が小さいから、収入が上がらないのですか?
器の大きさは、数字で確かめる手立てがありません。原因だとも、違うとも、この記事は書きません。代わりに確かめるのは、自分の収入を誰が何を見て決めているかを、自分が知っているかどうかです。1行の空欄が埋まらないなら、埋める場所がそこにあります。
1行を書けば、収入は上がりますか?
上がるとは約束しません。1行で分かるのは、収入が何で決まっているかを自分が知っているかどうかだけです。転職、副業、値上げの方法も、この記事は書きません。「?」が残ったら、それを埋められる人の名前を横に書くところまでが、今日の動作です。
給料が支払われていません。この記事の手順でよいですか?
いいえ。未払いや不当な賃金の引下げは、1行を書くより先に、総合労働相談コーナーに相談してください。平日の夜や土日祝は、賃金不払いなど労働基準関係の相談を労働条件相談ほっとラインが受けています。いじめや嫌がらせ、パワハラも、総合労働相談コーナーが対象です。この記事は法律相談ではありません。
給料日に、空欄を読み返す
給料日の明細は、器の大きさを教えてくれません。先に書いた1行の空欄が、前の給料日から1つでも埋まったかどうかは、明細と並べて確かめられます。この記事で数える数字は、埋まった空欄の数です。