感謝しているのに良いことが起きないのは、感謝が足りないからではない
毎晩ありがとうを書いた。嫌なことがあっても感謝に変えようとした。それでも良いことが起きない。先に答えます。感謝しているのに良いことが起きないのは、あなたの感謝の量や心の込め方が足りないからではありません。
感謝の研究で報告されているのは、感謝の課題を続けた人の幸福感などが、小さく上がったというところまでです。感謝が良い出来事や願いの実現を連れてくる仕組みは、確かめられていません。起きないことは、あなたの感謝が失敗した証拠にはなりません。
このページが扱うのは、感謝を「願いを叶える手段」として続けてきて、疲れてきた人です。ノートの書き方全般は引き寄せノートで叶わないのはなぜかに、感謝を残してよい習慣として仕分けた整理はスピリチュアルに疲れた人へにあります。
感謝を、願いの前払いにしない
脳質改善を提唱するりゅうは、引き寄せを否定していません。一方で、波動や宇宙に原因をすべて預ける説明とは距離を置いています(本人の言葉はスピリチュアルに疲れた人へに載せました)。
引き寄せでよく勧められるのが、まだ叶っていない願いに先に礼を言う書き方です。「素敵な仕事が決まりました。ありがとうございます」。りゅうは、願い方について2026年7月27日の本人回答でこう話しています(言いよどみを省いています)。
「これは引き寄せたい、これは引き寄せたい」って思えば思うほど、自分はこれをまだ持っていないんだっていう脳の状態になっちゃうから、結局遠ざかっちゃう
これは願うことについての言葉で、感謝について話したものではありません。感謝そのものを主題にした本人の発言は、編集部の手元にまだありません。それでも、前払いの感謝に当てはめると見えてくることがあります。叶ったことにした文を毎日書く時間が、まだ手元にないことを確かめる時間にもなりうる点は、引き寄せノートの記事で扱いました。感謝の場合はそこにもう1つ加わります。届かない日が続くと、「感謝が足りない」という説明が自分に返ってくることです。感謝を手段にすると、感謝は願いの進み具合を測る物差しに変わります。物差しになった感謝は、目盛りが動かないたびに自分を責める材料になります。
感謝の研究で分かっていること、分かっていないこと
感謝の効果は、どのくらい確かめられているのか。2025年に発表されたチョイらのメタ分析は、28か国、24,000人あまりの参加者を含む145本の論文をまとめました。感謝の課題は、幸福感などの指標を全体として小さく高めていました。効果の大きさには国による差がありましたが、その差を何が生んでいるかは分かっていません。
比べる相手によって、見え方も変わります。デイビスらのメタ分析(2016)では、何もしない群と比べると、心理的な健康の指標で差が出ていました。一方、同じくらいの手間の別の作業をした群と比べると差は小さくなり、心理的な効き目がありうる別の課題と比べると、上回ってはいませんでした。
気分の不調についても分析があります。クレッグとチーヴェンスのメタ分析(2021)は、27の研究から、感謝の課題が抑うつと不安の症状に与える影響を調べ、効果は小さいと結論しました。著者たちは、症状を和らげたい人には、より強い根拠のある方法を勧めています。
まとめると、感謝を書いたり考えたりする習慣には、気持ちを少し支える働きがありうる。ただし効果は小さく、ほかの前向きな作業と比べて特別に強いとは言えず、不調を治す方法でもない。どの研究も、感謝した人に良い出来事が起きたか、願いが叶ったかは調べていません。感謝をやめる理由にはなりませんが、感謝に願いの実現まで背負わせる理由もありません。
「当たり前」になった良いことは、見えにくくなる
良いことが起きない、と感じるとき、起きていないのではなく、起きたことが当たり前の棚に入っている場合があります。悪い出来事ほど重く記憶に残りやすい傾向は、運が悪いと感じる理由で扱いました。良いことの側にも、見えにくくなる理由があります。
クーらの実験(2008)では、自分の人生にあった良い出来事について、それが「起きなかったかもしれない道筋」を書いた人は、「どう起きて、どう生活の一部になったか」を書いた人より、書いたあとの気分が前向きでした。予想を尋ねられた別の参加者たちは、この結果を見込めていませんでした。恋人と出会わなかったかもしれない道筋を書いた人は、関係への満足度が高かった、という結果もあります。
大学生などを対象にした短い実験で、長く続く効果や、良い出来事が増えることを調べたものではありません。持ち帰れるのは、良いことは、慣れてしまうと数えられなくなるという見方です。りゅうは、チャンスがどこから来るかを聞かれて、こう答えています(2026年8月10日の本人回答)。
そういうチャンスとかって、絶対身近にあるから。そう、身近にあったものを気づけなかったとき、本来身近にある。
感謝について語った言葉ではありません。それでも、良いことを遠くの願いの側ではなく、すでに身近にあるものの側で探すという向きは、感謝にもそのまま使えます。
回数を増やすほど良い、とは限らない
感謝が効かないと感じると、回数を増やしたくなります。ありがとうを何度も唱える、ノートを何ページも埋める。リュボミアスキーらの論文(2005)には、学生に6週間、感謝できることを考えてもらった研究が紹介されています。週1回の群は、何もしない群と比べて幸福感が上がっていましたが、週3回の群では上がりが見られませんでした。著者たちは、何度もやるうちに新鮮さや意味が薄れたのかもしれない、と考察しています。
未発表のデータを紹介したもので、対象は学生、期間も6週間です。上がった状態が続くかは調べていません。週1回が正解だと言える研究でもありません。ただ、感謝は、量を積むほど効くノルマとは違うと考える材料にはなります。回数を課すと、感謝は作業になり、こなせなかった日は失敗の日になります。唱える習慣の扱いはアファメーションに効果はあるのかにもあります。
感謝と引き寄せでよく言われることを、確かめられる言葉に直す
画面が狭い場合は、表を左右にスクロールできます。
| よく言われること | 苦しくなる理由 | 確かめられる言葉に直すと | 自分の担当 |
|---|---|---|---|
| 感謝すると良いことが起きる | 起きないと、感謝の質のせいになる | 報告されているのは幸福感などの小さな変化まで。出来事を調べた研究は編集部は確認していない | 感謝を、気持ちが軽くなるかどうかで扱う |
| 叶ったことにして先に礼を言う | 届かない日が続くほど、足りなさを確かめる時間になる | 前払いの感謝が願いを叶えると確かめた研究は、編集部は見つけていない | すでにあったことに向けて書く |
| 回数を重ねるほど効く | ノルマになり、できない日が失敗になる | 週3回より週1回の群で幸福感が上がったという報告がある。対象と期間は限られる | 回数を決めない。書けない日は休む |
| つらい出来事や嫌な相手にも感謝する | 傷ついた気持ちを、自分で否定することになる | それを勧める根拠を、編集部は確認していない | 感謝の対象から外してよい |
この表は編集部の整理です。右端の列をやれば良いことが起きる、という意味ではありません。
感謝できない日と、感謝を求められる関係
感謝しなければと思うほど、感謝できない自分が気になります。りゅうは、自分の状態を上げるためにやっていることを聞かれて、こう答えています(2026年8月1日の本人回答)。
どの物事のいい面も悪い面もちゃんと把握した上で、いい面を見るようにしてる。これちょっと難しいけどね。
悪い面を消してから感謝するのではなく、悪い面を見たうえで、いい面を探す。しかも本人が「難しい」と言っています。これは波動について聞かれた答えで、感謝について語った言葉ではありません。いい面が見つからない日があって当然です。その日は空欄のままでかまいません。反省と自分を責めることの分け方は自己否定をやめたいときにあります。
家族やパートナー、職場などで「感謝が足りない」と言われ続け、暴力や強い束縛、脅しがある場合は、感謝の練習より先に相談してください。内閣府男女共同参画局の案内では、「#8008」(DV相談ナビ)に電話をすると、近くの都道府県の配偶者暴力相談支援センターにつながる、とされています。身の危険が迫っているときは110番へ。
架空の例:ありがとうを書き続けたFさん
編集部が作った架空の例です。実在の相談や、受講生の事例ではありません。
Fさんは半年間、毎晩ノートに感謝を10個書いてきました。半分は「昇進しました。ありがとうございます」のような、叶ったことにした文です。昇進の話は来ず、Fさんは「感謝が表面だけだからだ」と考え、数を増やしました。疲れて書けない夜は、それ自体が気になって眠りが浅くなります。
Fさんが変えたのは2つです。叶ったことにした文を書くのをやめ、その日すでにあったことだけを書く。数は決めず、1つ書けたら閉じる。ある夜の1行は「同僚が、資料の誤字をこっそり教えてくれた」でした。その隣に「教えてもらえなかったら、会議で恥をかいていた」と書き足しました。昇進したかは、この例でも分かりません。変わったのは、感謝が願いの進み具合を測る物差しではなくなり、書けない夜に自分を責める材料が1つ減ったことです。
今日できる1つの動作。すでにあったことに、1行だけ礼を言う
- 今日あったことから、助かったことを1つ選ぶ。小さくてかまいません。電車が座れた、店の人が丁寧だった。願いに関係なくていい。
- 「それがなかったら」を1行書く。クーらの実験の形を借りた書き方です。「座れなかったら、立ったまま1時間だった」。
- 相手がいる場合は、言葉で伝えるかを考える。伝えるかどうかは自分で決めます。義務にはしません。
- 書けない日は書かない。空欄の日を失敗として数えません。
3つ目の、言葉で伝えるかどうか。りゅうは受講生との対談で、笑顔の話に続けて、礼の言葉を口に出すかどうかについて「『ありがとうございます』ってはっきり伝えるか伝えないかで、だいぶ印象って変わる」と話しています(2026年8月18日の本人発言)。ありがとうを伝えれば良いことが起きる、という話ではありません。感謝を宇宙や願いの側ではなく、目の前の人とのやりとりの側に置く、というのが本人の見立てです。りゅう自身、事業が行き詰まった時期を振り返って「家族も、取引先の人も、お客様も助けてくれました」と話しています(本人インタビュー)。起きたことを見直すとき、そこにいた人が見える。1行の礼は、そのための小さな記録です。起きたことと受け取り方を分ける書き方は事実と解釈を分ける方法にあります。
この記事が約束しないこと
感謝すれば良いことが起きる、運が上がる、願いが叶う、とは書きません。感謝で気分の不調や体の不調が治る、とも書きません。引用した研究が扱うのは、感謝の課題と幸福感・抑うつや不安の症状の関係、良い出来事の「なかったかもしれない道筋」を書いたときの気分、感謝を考える頻度の違いです。どれも、出来事や願いの実現を調べたものではありません。りゅうの発言は本人の見立てで、感謝について語ったものではない部分を含みます。
感謝の量ではなく、その手前にある捉え方や行動の土台から見直したい方は、無料セミナーの内容を確認することができます。セミナーは感謝で願いを叶える方法を教えるものではありません。気分の落ち込みや眠れない状態が続く、生活に支障が出ているときは、感謝の習慣で抱え込まず、医療機関や公的な相談窓口への相談を優先してください。脳質改善は医療ではなく、この記事は診断や治療ではありません。
よくある質問
感謝すると引き寄せが起きる、というのは本当ですか?
感謝すると望む出来事が起きる、という仕組みを確かめた研究を、編集部は確認できていません。多くの研究をまとめた分析で報告されているのは、感謝の課題を続けた人の幸福感などの指標が、小さく上がったというところまでです。感謝は、出来事を呼ぶ手段としてではなく、気持ちが少し軽くなるなら続ける習慣として扱うのが、この記事の立場です。
感謝ノートは毎日たくさん書いたほうがいいですか?
多く書くほど良い、とは言えません。感謝できることを考える課題を週1回した学生と週3回した学生を比べ、幸福感の上がり方が見られたのは週1回の側だけだった、という報告があります。未発表のデータで、対象も期間も限られています。回数を決めるより、書けた日に1つ書く、書けない日は休む、くらいで十分です。
感謝できない自分は、心が貧しいのでしょうか?
そうは考えません。疲れているとき、つらいことが続いているとき、感謝の言葉が出てこないのは自然なことです。感謝できない日を、自分の中身の点数にしなくてかまいません。気分の落ち込みや眠れない状態が続くときは、感謝の習慣で抱え込まず、医療機関や公的な相談窓口への相談を優先してください。
自分を傷つけた人や、つらい出来事にも感謝すべきですか?
この記事は勧めません。傷ついた出来事や相手を、感謝の対象に入れなくてかまいません。感謝は、自分の気持ちを押し込めてまで向けるものではありません。暴力や強い支配のある関係の中で「感謝が足りない」と言われている場合は、自分の工夫より先に相談窓口へ相談してください。
感謝は、願いの物差しにしなくていい
良いことが起きない理由を、自分の感謝の足りなさに探すのは今日で終わりにしてかまいません。感謝は、気持ちを少し支えることがある小さな習慣です。願いの進み具合を測る道具ではありません。すでにあったことに1行礼を言い、書けない日は休む。感謝を続けるかどうかも、あなたが決めてかまいません。
願いを動かせることと動かせないことに分ける手順は願いが叶わないのはなぜかに、引き寄せが効かなかった理由の整理は引き寄せの法則は効果がないのかに、よく言われる主張を1件ずつ確かめた一覧はよくある誤解の検証にあります。