RASは実在します
まず、あるものと無いものを分けます。網様体賦活系(RAS)は実在する脳の仕組みです。脳幹にある神経のネットワークで、意識や覚醒の水準、注意を向けられる状態を保つはたらきに関わるものとして 記述されています。眠っている状態と起きている状態を分けている層、と考えるとおおよそ合っています。
問題は、この実在する名前に、後から別の機能が足されていることです。
足されているのは、どの部分か
引き寄せの文脈では、RASはたいてい「欲しい情報だけを通すフィルタ」として説明されます。 目標をRASに入力すれば、それに関係する情報が自動的に集まってくる、という形です。
この用法を支持する一次資料を、私たちは確認できていません。「確認できていない」は「間違いだと証明した」とは違います。私たちが辿り着けていないだけかもしれないので、そう書きます。 ただし、辿れないものを自分の説明の根拠にはしません。
整理すると、次のようになります。
- 確認できること — 意識・覚醒・注意を向けられる水準を保つはたらきに関わる
- 確認できていないこと — 願いや目標を入力すると、それに関する情報を選んで通す
注意の水準を保つことと、注意が何を選ぶかは、別の層の話です。 後者を説明するために使われている用語は、脳科学の側では選択的注意です。
体験のほうは、本物です
「気にし始めたら、急に同じものが目に入るようになった」。この体験自体は起きます。 注意が、行動に関連する刺激の処理を選ぶ仕組みは神経科学で検討されています。 つまり説明する言葉を取り替えれば足りるのであって、体験を否定する必要はありません。
ただし、見えるものが変わったことは、外界が変わったことの証拠にはなりません。 ここを混ぜると、「情報が目に入った」から「宇宙が動いた」まで一続きに見えます。 分けたままにしておくと、次に何をすればいいかが具体的に決まります。
なぜ、この説明は広まったのか
実在する用語だからです。RASは辞典にも教科書にも載っています。名前が実在することと、その名前に付けられた機能が実在することは、別ですが、 調べると「ある」と出てくるので、確かめたつもりになれます。
この見分け方は、RASに限りません。実在する用語を借りた説明に出会ったら、その用語の一次資料に、その機能が書いてあるかを見ます。書いていなければ、 用語を借りただけです。私たち自身も過去に同じことをしていました。その記録はよくある誤解の検証に残しています。
脳質改善での扱い
RASを根拠としては使いません。「意識すると見えるものが変わる」を説明するときは、 選択的注意という語に置き換えます。願うことを否定はしませんが、 思い描くだけでは行動へのエネルギーがむしろ下がる場合があるという報告もあるため、見え方が変わったあと、実際に何を選ぶかまでを扱います。
引き寄せと脳科学の関係は引き寄せの法則は脳科学で説明できるか、 「やってみたが変わらなかった」を扱うのは引き寄せの法則は効果がないのかです。 語ごとの扱いは言葉の対訳表にあります。