If-Thenプランは、目標を「始める場面」へつなぐ計画

「今日は勉強する」と決めたのに、問題集を開かずに夜になった。「毎日ノートを書く」と決めたのに、3日目から白紙が続いた。 If-Thenプランは、この「決めたのに動けない」に向けた計画で、「もし、この場面になったら、この行動をする」と、合図と最初の動作を1文に結びます。 目標の代わりではなく、目標の手前に足す1文です。

心理学では実行意図と呼びます。Gollwitzerが1999年の論文で「状況xが起きたら、目標に向かう反応yを始める」という形で定義した計画で、 2006年のGollwitzerとSheeranのメタ分析は、94件の独立した検証をまとめ、目標達成に中から大の効果(d=0.65)を報告しています。 効果の出どころとして挙げられているのは、決めておいた機会に気づきやすくなることと、その場での反応が自動化されることの2つです。 計画を1文書けば成果が出るという保証ではなく、この記事の記入欄と例は、研究の形式を日常で試すために編集部が作った実践案です。

りゅうは受講生の継続について話す中で、意志の強弱より「このタイミングでこれをやる」という時間の置き場所に注目しています。 2026年8月18日の対談で語った本人の見立てで、原文は習慣化の環境づくりに載せています。すべての人の継続を説明する研究結果ではありません。

なぜ「やる気」より「いつ・どこで」が効くのか

決めたのに動けない日、足りなかったのはやる気だと思いがちです。研究が指しているのは別の場所です。 WebbとSheeranが2006年に、人の意図を実験で変えた47件の研究をまとめたところ、意図は中から大の大きさで変わったのに(d=0.66)、行動の変化は小から中にとどまりました(d=0.36)。 意図と行動のあいだには隔たりがある、という結果です。

If-Thenプランは、この隔たりを埋める向きの計画です。Gollwitzerは1999年の論文で、実行意図を作ると、行動を始める制御が、その場の自分の判断から、あらかじめ決めた状況の合図へ委ねられると説明しています。 意志で押すのではなく、その場で考え直す回数を減らす。「夜に勉強する」では、夜が来るたびに「今やるか」を判断し直します。「夕食の皿を片づけたら問題集を開く」なら、判断は書いた時点で済んでいます。

この記事の見方も、りゅうが受講生の継続を見て「個人的に思ってて」と前置きしながら時間の置き場所を挙げたのと同じ向きです。意志の強さで押すのではなく、判断がその場に残っていないかを見ます(編集部の整理です)。

If-Thenプランの作り方:4つの欄を埋める

  1. 進めたいことを1つ選ぶ。「生活を変える」ではなく「英語の問題集を進める」まで絞ります。自分が進めたいことかも確かめます。
  2. 気づける合図を選ぶ。「余裕ができたら」ではなく「夕食の皿を片づけたら」。その場で起きたと分かる出来事にします。
  3. 最初の動作を書く。「集中する」ではなく「机で問題集を開き、1問目を読む」。成果や気分ではなく、手や目をどう動かすかを書きます。
  4. 合図の直後にできるか確認する。その場所に道具があるか、次の予定とぶつからないかを見ます。難しければ合図か動作を変えます。
進めたいこと:____
もし【合図:____】になったら、
【場所:____】で【最初の動作:____】をする。

合図は時刻でも構いません。ただ、「21時」が毎日会議とぶつかるなら、時刻にこだわらず「最後の会議を終えて予定表を閉じたら」と書けます。 合図を考える前に止まる理由を整理したい方は、わかっているのに行動できないときを参照してください。 願いを書くノートを続けている方は、願いの下にこの1文を足す使い方を引き寄せノートを書いても叶わないのはなぜかに載せています。

合図の選び方:「したら」に使える出来事、使いにくい出来事

4つの欄のうち、いちばん差が出るのは合図です。メタ分析が効果の出どころに挙げた「決めておいた機会に気づきやすくなる」は、気づける合図を決めたときに起きることで、「余裕ができたら」では起きようがありません。 使える合図の条件は3つです。毎日ほぼ同じ順番で起きる。起きた瞬間が自分で分かる。その直後に数分の空きがある。

編集部の整理。
書きがちな合図使いにくい理由置き換えの例
時間ができたらいつ来たのか分からない昼休みに弁当を食べ終えたら
疲れていなかったら判断がその場に戻る帰宅して上着を掛けたら
朝起きたら起きてから最初の動作までの幅が広い朝、コーヒーを注いだら
気が向いたら気分は、起きたと分かる出来事にならない洗濯機のスタートボタンを押したら

合図は、すでに毎日やっている動作の終わりから選びます。毎日起きている動作は、起きたと分かりやすいからです。新しい合図を作ると、その合図を覚えて回すところから始めることになり、続きにくくなります(編集部の整理です)。

最初の動作は、1分で終わる大きさにする

「問題集を1章解く」と書くと、合図が来た瞬間に重さが見えて止まります。If-Thenプランの後半に書くのは、目標の全体ではなく入口の動作です。「問題集を開いて1問目を読む」。1分で終わるものにします。 入口を通れたら続けて構いませんし、そこで終えても「始められた」という記録は残ります。目標を達成したかどうかは、その記録と分けて見ます。

勉強・仕事・片づけの記入例

編集部による記入例。本人や受講生の実績ではありません。
取り組み合図が曖昧な計画If-Thenプランの例
勉強夜に英語を頑張る夕食の皿を片づけたら、机で問題集の1問目を読む
仕事時間ができたら資料を作る朝の予定確認を終えたら、資料ファイルに見出しを1つ書く
片づけ気が向いたら部屋をきれいにする帰宅して鍵を置いたら、机の紙を1枚だけ所定の箱へ入れる

1問や1枚は、この例で入口を明確にするための量です。研究で決まった最適量ではありません。

うまくいかない作り方の例と、直し方

書いたのに動かなかった計画には、形の癖があります。4つ挙げます。

編集部の整理。特定の人の計画ではありません。
書き方止まる理由直し方
毎日30分英語をやる合図がなく、30分という重さが先に見える夕食の皿を片づけたら、問題集の1問目を読む
朝起きたらストレッチする「起きたら」の幅が広く、床に足をつける前に別のことが始まるベッドから降りて床に足をつけたら、両腕を1回上げる
時間ができたら資料を作る空いた瞬間に別の用事が入り、合図として起きない朝の予定確認を終えたら、見出しを1つ書く
ノートに願いを10個書く10個が重く、眠い時間帯には判断がその場に戻る歯を磨いたら、ノートを開いて1行書く

共通しているのは、合図が曖昧か、動作が大きいかのどちらかです。直す向きも2つだけで、合図を「起きたと分かる出来事」に替えるか、動作を入口まで縮めるか。1つずつ変えます。

実行できなかったら、どこを書き直す?

計画が動かなかった日は、「やる気が足りなかった」で閉じず、実際にどこで止まったかを書きます。

  • 合図そのものが起きなかった:残業で夕食の流れが変わるなら、次に起きる別の出来事へ置き直します。
  • 合図には気づいたが道具がなかった:問題集を机に置く、必要なファイルを開ける状態にする、と準備を変えます。
  • 行動が重すぎた:「1章解く」を「1問目を読む」へ縮め、同じ合図で試します。

2つ目のプランを先に作っておく手もあります。「もし夕食の流れが崩れて皿を片づけなかったら、歯を磨いたあとで問題集を開く」。 逃したときの行き先まで書いておくと、逃した日にも次の合図が手元に残ります。 最初は1つだけ変えると、次に何が違ったかを比較できます。できたかどうかと条件の残し方は習慣化の記録方法にまとめています。 中断が続いたあとの戻り方は継続できない原因と再開方法へどうぞ。

何個作ればいいか

最初は1つです。DaltonとSpillerが2012年に消費者行動の研究誌に発表した実験では、実行意図は1つの目標には役立つ一方、複数の目標に同時に作ると、その効果は通常は広がらないと報告されています。 著者の説明は、複数の計画を立てると実行の難しさが目立ち、その目標への関与が下がる、というものです。 1つ目の合図が毎日の流れに乗ってから2つ目を足す。これが編集部の提案で、研究が示した期間ではありません。

引き寄せノートやアファメーションを「毎日やる」と決めて、続かなかったとき

「引き寄せノートを毎日書く」「鏡の前でアファメーションを唱える」と決めて、1週間で止まった。それで「自分は引き寄せ体質ではない」「潜在意識が抵抗している」と結論を出した人へ。 止まった理由を体質や潜在意識に置く前に、計画の形で見ます。「毎日書く」には合図がなく、「願いを10個書く」は動作として重い。勉強の計画と同じ形で止まっています。

りゅうは、引き寄せや成功法則を本気で信じていた時期はあるかと聞かれ、引き寄せについては「今も信じています」と答えたうえで、こう続けています。

以前は、願うだけ、イメージするだけ、アファメーションするだけで変わると思っていた時期もありました。しかし、今はそれだけでは変わらないと考えています。願いやイメージだけでなく、当然、行動が必要です。

2026年7月の創業者インタビューでの本人回答で、If-Thenプランについて語った言葉ではなく、引き寄せをどう見ているかの話です。同じ回答で本人が話しているのは、「ただし、意識することで、目に入ってくるものが変わることはあると思います」というところまでです。 編集部がここから借りるのは、願いやイメージの隣に行動の欄が要る、という1点です。その行動の欄を、合図と最初の動作の形で埋めるのがIf-Thenプランで、本人が勧めた道具ではありません。

使い方は2つあります。1つは、ノートやアファメーションそのものを続ける計画にすること。「歯を磨いたら、ノートを開いて願いを1行書く」。 もう1つは、ノートに書いた願いの下に、行動の1文を足すこと。「海外で働く」の下に「もし朝コーヒーを注いだら、英語の問題集を1問読む」。 唱える方法の整理はアファメーションに効果はあるのかにあります。

架空の例:洗濯機が回る間に、電子ピアノの電源を入れた前田さん

前田さん(編集部が作った架空の例です。実在の相談や、受講生の事例ではありません)は、引き寄せノートに「ピアノが弾ける自分」と書いて半年になります。電子ピアノは買いました。 「毎日練習する」と決めたのに、鍵盤に触れない日が続き、「私は本気じゃないのかもしれない」と考えるようになりました。

前田さんが書き直したのは、願いではなく計画の形です。進めたいこと:ピアノを弾く。合図:洗濯機のスタートボタンを押したら。場所:居間。最初の動作:電子ピアノの電源を入れて、右手だけで1小節弾く。 洗濯機は毎晩回していて、押した瞬間が自分で分かり、回っている40分のあいだは手が空く。3つの条件がそろった合図でした。

1週目の記録です。

  • 月曜:押した。電源を入れて1小節。そのまま10分。
  • 火曜:押した。電源を入れて1小節で終了。
  • 水曜:洗濯を休んだ。合図が起きず、弾かなかった。
  • 木曜:押した。電源を入れて1小節。15分。
  • 金曜:押した。電話が鳴り、電源を入れたところで終了。
  • 土曜:洗濯を休んだ。弾かなかった。
  • 日曜:押した。1小節。5分。

合図が起きた5日は全部、電源を入れるところまで動いています。止まった2日は、やる気の問題ではなく、合図が起きなかった日でした。 2週目に足したのは2つ目のプランです。「もし洗濯を休む日なら、夕食の皿を片づけたときに電源を入れる」。 ピアノが上達したかどうかは、この記事では扱いません。扱うのは、「本気じゃない」という結論が、合図が起きなかった2日分の話だった、というところまでです。

研究で分かることと、この計画の限界

実行意図は始め方を決める計画です。一方、WoodとRüngerの習慣研究レビューは、同じ文脈での反復と習慣の関係を整理しています。計画を作ることと、行動が習慣になることは同じではありません。記入例、合図の3条件、架空例を検証した研究はなく、引用したメタ分析は目標達成全般を扱ったもので、引き寄せノートやアファメーションを調べたものではありません。

行動の難しさには、必要な技能、時間、家庭や仕事の事情も関わります。

よくある質問

If-Thenプランは『毎日勉強する』と何が違いますか?

毎日勉強する、は目標です。If-Thenプランは『夕食の皿を片づけたら、机で問題集の1問目を読む』のように、実際に気づける合図と最初の動作を結びます。目標を置き換えるものではなく、始め方を決めるための計画です。

If-Thenプランは何個作ればいいですか?

最初は1つです。DaltonとSpillerの2012年の実験では、1つの目標には役立った実行意図が、複数の目標に同時に作ると効果が広がらなかったと報告されています。1つ目の合図が毎日の流れに乗ってから2つ目を足す形が、編集部の提案です。

決めた時間を逃したら、どうすればいいですか?

その日の計画をすべて失敗とせず、次に起きる場面へ合図を置き直します。朝に読めなかったら、帰宅後にかばんを置いたとき、本を1段落読む計画へ調整します。休息や安全を優先する必要がある日は見送れます。

合図が来たのに動かなかったのは、意志が弱いからですか?

意志の問題として閉じません。先に見るのは3つです。合図の直後に道具が手元にあったか、動作が1分で終わる大きさだったか、合図の直後に別の用事が入らなかったか。1つだけ変えて、同じ合図でもう一度試してください。

引き寄せノートやアファメーションにも使えますか?

使えます。『歯を磨いたら、ノートを開いて1行書く』のように、書く行為や唱える行為そのものに合図をつける使い方と、書いた願いの下に行動の1文を足す使い方があります。願いが叶うかどうかを約束する計画ではありません。

強い疲労や気分の落ち込みが続くときは

計画を書き直しても動けない日が続き、眠れない、食欲がない、気分の落ち込みが抜けないときは、計画の形だけの問題とは限りません。 実行のルールを増やして自分を追い込まず、休息と、医療機関や公的な相談窓口への相談を優先してください。この記事は診断や治療ではありません。